帰国したくない生徒続出…英国名門校で学ぶ夏


イギリスを代表する全寮制の男子校「イートン・カレッジ」のサマースクールに学習院女子中等科・女子高等科(東京都新宿区)の生徒が毎年参加しているhong kong summer school。1440年の創立以来、英国首相など歴史に名を残す世界的な著名人を輩出してきた超名門校が提供するプログラム。参加した生徒たちの多くが「帰りたくない」と涙する中身、魅力とは。
イートン校に3週間…学習院女子40人専用に新クラス
 同校からサマースクールへの参加者は中等科3年生、高等科2・3年生が応募し、抽選で決まります。毎年、応募者数が多いため今年から定員枠を拡大しました。
 「定員25名だった昨年までは、他の学校との合同クラスで授業を受けていたのですが、40名になった今年から、学習院女子だけのレベル別3クラスを設けていただくことになりました」というのは、長年このサマースクールを担当してきた教頭の八名まり子先生。「そこで、イートン校の方に学習院女子の英語の授業を参観していただき、今年から学習院女子の英語教育を参考にシラバス(授業計画)を組み直していただいたのです

 同校は国際教育に力を入れており、生徒は英語のレベルが高い。英語によるコミュニケーション能力を測定する「GTEC」では、中等科3年で海外高校の授業に参加できるレベル、高等科2年で海外の大学進学を視野に入れることができるレベルの成績を収めているという。

 英語スキルの高い生徒たちが、3週間の滞在で何を学ぶのか。「イギリス文化や英語のコミュニケーションについて学ぶのです。授業はイートン校の先生方や、イートン校卒業後にオックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学した“イートニアン”が指導してくれます。3週間で英語が目覚ましく上達するわけではありません。でも、イギリスは階級によって使う英語が異なりますから、王室の子息も使うイートニアンの美しい英語に触れることは貴重な体験でしょう。約600年の歴史を持つ伝統校ならではの洗練された立ち居振る舞いを目の当たりにすることも、よい刺激になります」と八名先生。

日本との通信は禁止…体力と精神力の勝負

滞在中の服装は学校生活と同じ身だしなみを基本にしており制服も持参
 「写真を見ると楽しそうに見えますが、滞在中は体力と精神力の勝負なのですよ」というのは、昨年引率した鈴木一久先生だ。
 「(プログラム期間中の)3週間は日本との通信は禁止。授業は毎朝8時半から始まり、イギリス文化や英会話の授業、午後に訪ねる観光地のことなどを学びます。一日の終わりにはジャーナル(日記)の作成があり、イートニアンの指導のもと、夜までかかって仕上げているようです。引率の日本人教師が授業や郊外見学を指導することはなく、困った時に生徒はイートニアンに英語で相談しサポートしてもらいます。宿泊するハウス(寮)は非常に質素な設備なので、生徒同士が相談し合い、限られたシャワーの時間を有効に使うなど工夫していました」
 そもそも、同校とイートン校は、同じような歴史を持つ学校同士で文化交流を深める「学習院・イートンプログラム」を19年前から始めている。この中で、学習院女子は毎年のサマースクールの結果と、英語授業のカリキュラムを検証して次回のリクエストを出すので、年を経るごとに参加者が学ぶ内容は濃厚になる。「それでも、帰国が近づくと生徒たちは“帰りたくない”と、涙、涙です」と鈴木先生はほほ笑みながら語る。
 「普通のホームステイにはない、特別な体験ができることは確かです」

英語での議論、異国の文化…「もっと」を痛感する体験
大英博物館などでも説明は英語なので出発前の予習は必須
イートン校の広大なグラウンドでラウンダーズ(野球に似たスポーツ)に挑戦

 サマースクールの参加には、父母からの期待も高いという。説明会を開く小講堂は毎年満員、参加人数をもっと増やしてほしいという声も多い。昨年参加した高校3年生5人に、感想を聞いた。
 「イートン・サマースクールに行きたくてこの学校を選んだ」というのは、久保田くぼた万祐まゆさん。「中等科3年の時から応募を続けて、やっと夢がかないました。授業で議論するのが難しく『もっと英語を話せるようになってから行きたかった』と帰ってきてから痛感しました」
 鰐部わにべ友希ゆきさんは「イートン校に入れること自体、素晴らしい経験でした」と感激した当時の様子を語る。「イギリスの文化に触れたことで、もっと海外の文化を知ったうえで日本を理解することが大切だと思いました」
 将来は法律関係の仕事をしたいので、日本と政治体制が似ているイギリスに興味があったというのは畑中はたなか絹きぬさんだ。「サマースクールでどんな体験をするかイメージはできていたのですが、実際に行ってみて、それ以上のものを見てこられたと実感しています。イートン校を通じてイギリスという国に触れたことで、もっといろいろな国に視野を広げなくてはと痛感しました」
成績だけでなく、人間的にも伸びる
3週間分のジャーナルは文化祭「八重桜祭」にて展示紹介される

 両親から強く勧められていたという荒木あらき希のぞみさんは“イギリス好き”。「イートン校はイギリスそのものだと感じました。もっと英語を勉強してもう一度訪ね、前と同じところで、改めてどんな印象を抱くか体験してみたい」という。応募時は英語に自信が持てず、参加は難しいと考えていたそうだ。
 滞在中に日本との比較を意識したというのは、宮田みやた真莉菜まりなさん。「イートニアンの先生に限らず、町で出会う普通の人でも、イギリス人は自国のことをよく知っていると感じました。自分を含め、日本人は自国のことをきちんと説明できない人が多いですよね。この経験は、これからの人生や物の考え方に良い影響があったと思います」
 八名先生によると、イートン校から戻った生徒は、成績だけでなく人間的にも伸びることが多いそうだ。「だからこそ、イートン・サマースクールは英語力を問わず誰でも応募できるようにしています。現地での体験から“自分はもっと勉強しなくてはならなかった”と気付くことが何よりも収穫ですから」

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今日のサマースクールは濃かった~!


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